校費も競争資金?

大学の予算について、財務省が試算をしたというニュースが流れた。

財務省は21日、国立大学向けの補助金である運営費交付金について、競争原理に力点を置いて配分方式を見直した場合の試算をまとめた。交付金は東大や京大など13校で増える一方、全国の国立大の85%の74校が減額になり、5割以上減る大学が50校に達する。財務省はこうした改革で効率化を促したい考えだが、文部科学省や大学側の反発は必至で調整は難航しそうだ。
新試算は21日の財政制度等審議会財務相の諮問機関)の財政構造改革部会に提示した。今年度の予算額で約1兆2000億円の同交付金について、研究内容や成果で決まる科学研究費補助金科研費)の2006年度の獲得実績に応じて配分した場合と想定した。現在の交付金は、教員数などを基本に一律配分している。
 試算によると、87ある国立大学のうち、東大が現在の2.1倍に増えるなど13校で交付金が増加する。減少するのは74校で、減額幅が最も大きいのは兵庫教育大で、今年度の配分予定額に比べて91%の減額になる。(日経

大学関係者でないと「運営費交付金」や「科学研究費補助金」と言われてもピンと来ないだろうが、前者は大学に直接文科省からおりてくるお金で、大学の教官にとっては講座に自動的に配分される予算だ。後者はそれぞれの研究者が自分で申請書を書き、審査に通れば受けられる研究費。意識としては運営費は学校のお金、科研費は自分がとって来た研究費ということになる。ちなみに科研費の採択率は高くなく、平均すると30%には届かない。結構厳しい。
確かに、研究のアクティビティの高さは科研費をどのくらいとっているかで測れるように見えるかも知れないけれど、やはり流行の研究の方が科研費が当たる可能性が高そうだし、本当に独創的な研究提案が採択されるとは限らない。また、まだまだ海のものとも山のものとも分からないところで大事にしている研究にも大きな研究費がつくことはまれである。そんな中で研究を下支えしてくれる運営費は大切だと思うのだが、そこまでも競争的な資金にしようというのはどんなものだろうと思う。こういう基準で再配分したら旧七帝大が強いのは当たり前で、金のある研究室はますますリッチに、貧乏な研究室はますます貧乏になる。
研究者として言わせてもらえば、我々は日本の中ではなく、世界の中で研究という厳しい競争をしているわけで、その余のところ、研究費の獲得や人事のことで必要以上の競争をさせられるのは決して良いことではないと思う。ある程度の競争は必要だと思うけれど、これ以上競争を沢山させられ、これ以上雑用を増やされて忙しくさせられたら、研究のレベルは下がってゆくと思う。
もう一つ。地方の国立大学の中には研究より教育にウェイトがある大学も沢山あると思う。それを運営費も含めて競争的研究費の配分に比例させようというのはナンセンスだ。試算でもっとも予算が下がるとされたのが兵庫「教育大」であったというのも象徴的というか、当前の結果だと思う。ま、そんな大学は必要ないというなら良いけれど、そんなことは財務省が決めることじゃないと思う。